会議を減らしたら生産性が上がったのは本当か
「会議が多すぎて仕事が進まない」。エンジニアなら一度は思ったことがあるはず。自分も思っていた。だから実際に会議を減らしてみた。
半年間の試行錯誤を経て、たどり着いた結論は「減らす」ではなく「選ぶ」だった。会議削減の施策、生産性の変化、そして副作用まで、実体験をもとに書く。
会議が多すぎた
減らす前の状態を把握するために、まず2週間のカレンダーを分析した。1日の会議数を計測したら、平均4.2回。1回30分として、1日2時間以上が会議に消えていた。
8時間の勤務時間のうち、2時間が会議、移動や準備で30分、ランチで1時間。実質的な作業時間は4時間半。半日しか仕事できていなかった。
しかも会議と会議の間の30分は、集中する前に次の会議が始まる。断片化された時間では深い思考ができない。コードを書き始めて、やっとロジックが見えてきたところで会議のリマインダーが鳴る。会議が終わって戻ると、さっきの思考の流れは消えている。ゼロからやり直し。この「コンテキストスイッチのコスト」が一番きつかった。
内訳を見ると、定例会議が6割、突発的な打ち合わせが3割、1on1が1割。定例会議の多さが目立った。スクラムのセレモニー、チーム横断の共有会、プロジェクトの進捗報告。それぞれに目的はあるが、自分が参加する必要があるかは別の話だった。
やったこと:3つの施策
会議を減らすために3つの施策を実行した。いきなり全部やったわけではなく、1つずつ段階的に試した。
施策1:定例会議の棚卸し
参加している定例会議を全てリストアップした。全部で12個。それぞれに「自分が発言した回数」「自分に関係する議題の割合」を2週間記録した。
結果、12個中5個は「自分が発言したのは2週間で0〜1回」「関連議題は全体の1割以下」だった。これらは議事録を読む形に切り替えた。議事録で疑問があればSlackで質問する運用にした。
残った7個のうち、2個は隔週に頻度を下げた。毎週やる必要がない内容だった。
施策2:30分会議を15分にした
自分が主催する会議のデフォルトを30分から15分に変更した。ただし「短くしただけ」では意味がない。短い会議を機能させるために、2つの仕組みを入れた。
1つ目は、アジェンダの事前共有。会議の24時間前までに議題と必要な資料をSlackに投稿する。参加者は事前に目を通してくる前提で会議を始める。
2つ目は、タイムキーパーの明確化。15分しかないので、議題ごとに時間配分を決めて、それを守る。「議論が発散しそうなら別途時間を取る」というルールにした。
最初は「15分で足りるのか」と不安だったが、アジェンダが明確だと意外と足りる。むしろ30分の会議で最後の10分がだらだらしていたことに気づいた。
施策3:非同期コミュニケーションへの置き換え
「情報共有」が目的の会議は、Slackかドキュメントに置き換えた。具体的には以下のルールを決めた。
Slackに置き換えたもの: 進捗報告、簡単な相談、FYI共有。週次でスレッドを立てて、各自が書き込む形にした。
ドキュメントに置き換えたもの: 設計レビュー、仕様の確認。事前にドキュメントを書き、コメントで非同期レビューする。論点が残った部分だけ短い会議で議論する。
非同期にする最大のメリットは、各自が自分のペースで処理できること。朝の集中時間にコードを書き、午後の疲れた時間にSlackの返信をする。自分のリズムに合わせて仕事を組み立てられるようになった。
結果:作業時間が1.5倍になった
施策を始めて1ヶ月後、再びカレンダーを分析した。
| Before | After | 変化 | |
|---|---|---|---|
| 1日の会議数 | 4.2回 | 2.1回 | -50% |
| 会議時間 | 2.1時間 | 0.8時間 | -62% |
| 作業時間 | 4.5時間 | 6.0時間 | +33% |
| 連続2時間以上の作業ブロック | 0.4回/日 | 1.6回/日 | +300% |
作業時間が4.5時間から6時間に増えた。約1.3倍。だが体感ではもっと増えた気がする。その理由は「連続2時間以上の作業ブロック」が1日0.4回から1.6回に増えたこと。断片化されていた時間がまとまったことで、集中力のロスが減った。
特に午前中に2時間のまとまった時間ができたのが大きい。設計を考える、複雑なバグを追う、新しい技術を検証する。こうした「深い集中を要する仕事」は、まとまった時間がないとそもそも着手できない。
生産性は上がったのか:数字で検証する
作業時間は増えた。でも「生産性」は上がったのか。感覚ではなく数字で検証した。
PRの作成数、レビュー完了数、タスクの消化数を3ヶ月分比較した。
| 指標 | 削減前(月平均) | 削減後(月平均) | 変化 |
|---|---|---|---|
| PR作成数 | 18件 | 25件 | +39% |
| レビュー完了数 | 24件 | 30件 | +25% |
| タスク消化ポイント | 34pt | 42pt | +24% |
月あたりのPR数が約1.4倍に増えた。作業時間の増加(1.3倍)を上回っている。まとまった時間で集中できた分、時間あたりの効率も上がったと解釈している。
ただし、これは「自分個人のアウトプット」であって、「チーム全体の生産性」ではない。ここが落とし穴だった。
副作用:見落としていたコスト
会議を減らした副作用があった。数字に表れない、じわじわと効いてくるタイプの問題。
情報の取りこぼし
議事録を読めばいいと思っていたけど、議事録に書かれない情報がある。議論の温度感、参加者の表情、質疑応答のニュアンス。テキストでは伝わらない。
「このプロジェクトは雲行きが怪しい」「あのチームはリソースが逼迫している」。こうした暗黙知は、会議に出ていないと拾えない。後から知って「もっと早く知っていれば対応できた」と思ったことが2回あった。
認識のズレ
非同期でのやり取りは、認識がズレやすい。対面なら即座に修正できるズレが、非同期だと拡大してから発覚する。ドキュメントのコメントで「これはこういう意味ですか?」「いえ、こういう意味です」と3往復するより、5分話した方が早いケースが少なくなかった。
非同期コミュニケーションが機能するのは、前提知識が揃っている場合に限る。前提が異なるまま非同期で進めると、手戻りが発生する。
関係構築の機会減少
他チームとの定例に出なくなったら、他チームのメンバーとの関係が薄くなった。困った時に「ちょっと聞いていいですか」と気軽に声をかけにくくなった。心理的なハードルが上がる。
チーム横断の仕事をする際、既に関係があるかないかで、進めやすさがまるで違う。関係構築は短期的なROIが見えにくいが、長期的にはチームの潤滑油になる。
必要な会議と不要な会議の判断基準
半年の試行錯誤を経て、自分なりの判断基準ができた。会議に招待された時、以下の3つの質問を自分に投げる。
1. この会議で意思決定が行われるか? 情報共有だけの会議なら、ドキュメントで代替できる。意思決定がある会議は、リアルタイムの議論に価値がある。
2. 自分の意見や情報がないと、会議の質が下がるか? 自分がいなくても同じ結論に至るなら、参加する必要はない。議事録で結果を確認すればいい。逆に、自分しか持っていない情報や視点がある場合は、参加する価値がある。
3. この会議を通じて、関係構築やチームの一体感に寄与するか? 特に新メンバーが入ったばかりの時期や、チーム間の連携が必要なプロジェクトでは、「顔を合わせる」こと自体に価値がある。効率だけで判断すると、こうした無形の価値を見落とす。
3つのうち1つでもYesなら参加する。全てNoなら欠席して議事録を読む。シンプルだが、この基準を明確に持つだけで判断が速くなった。
最適解は「減らす」ではなく「選ぶ」
会議を一律に減らすのは間違いだった。大事なのは「どの会議に出るか」を選ぶこと。
出ると決めた会議には積極的に参加する。発言する、質問する、議論に貢献する。出ないと決めた会議の分は作業時間に充てる。メリハリをつけることで、会議の質も作業の質も上がった。
非同期コミュニケーションに置き換える際も、「なんでも非同期にすればいい」わけではない。テキストで伝わる内容は非同期、ニュアンスが重要な内容は同期。この使い分けが大事だった。
会議は悪ではない
「会議 = 悪」という思い込みがあった。でも会議自体は悪くない。悪いのは目的がない会議、長すぎる会議、参加者が多すぎる会議。
適切な会議は、非同期では実現できない価値がある。リアルタイムの議論、合意形成、関係構築。これらは会議でしかできない。
生産性を上げたいなら、会議をゼロにするのではなく、会議の質を上げる。自分が参加する会議を選び、参加する会議では全力で貢献する。これが半年かけて出た結論。
会議の多さに不満を持っているなら、まず2週間のカレンダーを分析してみてほしい。自分の時間がどこに消えているか、可視化するだけで行動が変わる。
関連記事
他の記事
ブラウザ横スクロールアクションゲーム開発記|TypeScript×Canvasで作るネオンランナー
HTML5 CanvasとTypeScriptで横スクロールアクションゲーム「ネオンランナー」を自作した。物理エンジン、衝突判定、操作性の工夫を解説する。
ブラウザで遊べるテトリス風パズルをTypeScriptで作った話
HTML5 CanvasとTypeScriptでテトリス風ブロックパズルを実装した。エンジンとUIを分離するSnapshotパターンや、ネオン演出のこだわりを解説する。
ゲーム実況のサムネイル作りで学んだデザインの基本
非デザイナーがゲーム配信のサムネイルを自作し続けて気づいた、視認性・配色・構図の基本ルール。試行錯誤の記録。
配信のコメント欄が動いた瞬間の話。ゼロからイチの体験
ゲーム配信でコメントがゼロの日々を超えて、初めてリアルタイムでコメントが来た瞬間の話。ゼロからイチの体験がモチベーションを変えた。